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酷薄
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こくはく
ふりがな文庫
“
酷薄
(
こくはく
)” の例文
この残忍
酷薄
(
こくはく
)
を
極
(
きわ
)
めた文言を読むと、私は流石にゾッとしないではいられなかった。そして、人でなし大江春泥を憎む心が幾倍するのを感じた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もし、そういうことでもあるならば礫のみでは済ませない、明らさまに表門をたたいて男の
酷薄
(
こくはく
)
を責めなければならない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、
膝
(
ひざ
)
も、腹も、胸も、恐らくは
頃刻
(
けいこく
)
を出ない内に、この
酷薄
(
こくはく
)
な満潮の水に隠されてしまうのに相違あるまい。
尾生の信
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鬼の鐘五郎と言はれた
酷薄
(
こくはく
)
無殘な男ですが、滿ち足りた今宵ばかりは、さすがに鷹揚な心持になるのでせう。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
太古のすがた、そのままの
蒼空
(
あおぞら
)
。みんなも、この蒼空にだまされぬがいい。これほど人間に
酷薄
(
こくはく
)
なすがたがないのだ。おまえは、私に一箇の銅貨をさえ与えたことがなかった。
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
試
(
こころみ
)
に問う、天下の人いかに、外に忠実なる
僕
(
しもべ
)
のごときは、内に
暴戻
(
ばうれい
)
なる旦那なり。
出
(
い
)
でては仁慈優愛なるもの、
入
(
い
)
っては残忍
酷薄
(
こくはく
)
にて、
隣家
(
となり
)
の娘に深切なるもの、
己
(
おの
)
が細君には軽薄なり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どんな残忍なことでも平気でやってのけそうな
酷薄
(
こくはく
)
な眼つきをしていた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
残忍、
酷薄
(
こくはく
)
、
卑汚醜穢
(
ひおしゅうわい
)
その性質もまた容貌のようであるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
『ちッ、貴様たちに、何がわかる。わが君の御刃傷には、やむにやまれない理由があっての事だ。上野介の
酷薄
(
こくはく
)
貪慾
(
どんよく
)
なことは、世上の定評に聴けッ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敏子は男を
睨
(
にら
)
むようにした。が、眼にも唇にも、
漲
(
みなぎ
)
っているものは微笑である。しかもほとんど平静を失した、烈しい幸福の微笑である。男はこの時妻の微笑に、何か
酷薄
(
こくはく
)
なものさえ感じた。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
六十八歳の今日まで、世が彼に遇して来たものは、白眼か、
策謀
(
さくぼう
)
か、利用か、
酷薄
(
こくはく
)
か、いずれにしてもかくの如く温かなものには絶えて
遇
(
あ
)
った
例
(
ためし
)
がない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
無限の感慨が、その面に
漲
(
みなぎ
)
っている。他家の陪臣づれから、こんな
酷薄
(
こくはく
)
な言葉を投げつけられたのは、三十余歳の今日まで、初めて身に沁みた事なのであろう。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酷薄
(
こくはく
)
と、
嘲蔑
(
ちょうべつ
)
のなかに、常に
彷徨
(
さまよ
)
って来た彼だけに、人の情けは人いちばい強く感じる彼だった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも呂布は暗愚で粗暴の大将にちがいない。しかし彼には汝よりも多分に善性がある。正直さがある。すくなくも、汝のごとく、
酷薄
(
こくはく
)
で
詐言
(
いつわり
)
が多く、自己の才謀に慢じて、遂には、上を
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諸人、面をそむけ、ひそかに都督の
酷薄
(
こくはく
)
をうらまぬはない。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“酷薄”の意味
《名詞》
酷で薄情なさま。
(出典:Wiktionary)
酷
常用漢字
中学
部首:⾣
14画
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
“酷薄”で始まる語句
酷薄無慙