郡奉行こおりぶぎょう)” の例文
仁斎橋を渡って町人町へはいったとき、渡部わたべという老人に会った。老人は郡奉行こおりぶぎょうで、提灯ちょうちんを持った供が付いてい、雨具をつけていた。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
郡奉行こおりぶぎょう鷲尾わしおと、太田村おおたむらの見廻り役、大高新右衛門おおたかしんえもんの両家へ、変を知らせておけ。もはやいずれも駈けつけておるかもしれぬが、念のために」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(平兵衛殿には、土州で郡奉行こおりぶぎょうになっておられるが、前方むこう御妻室ごかないを持って、男の子まであります)
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
甚七の邸で殺された一人が郡奉行こおりぶぎょうせがれであったからである。甚七が村はずれへかゝった時、二人の手先が競いかゝった。それを倒して村へ入った時、大勢の者に取巻かれた。
新訂雲母阪 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
のち郡奉行こおりぶぎょうとなり、昔橘良基よしもとが五国守となりし時、その処身の秘訣を述べて「百術は一清にかず」といえるをとりて、職にる間「不如一清」の四字を刻したる印を用い、清廉せいれんを以て自からも期し
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
豊三郎はそれをもって、おりから軍議最中の飯田城へ駆けつけたところ、郡奉行こおりぶぎょうはひそかに彼を別室に招き間道通過に尽力すべきことを依託したという。その足で豊三郎は飯田の町役人とも会見した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
西条家は二百三十石、亡くなった父の世左衛門は大番がしらで勘定方取締を兼ねていたが、庄兵衛は郡奉行こおりぶぎょうが兼務であった。
十八条乙 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と桐井角兵衛は、机に山積している各地の郡奉行こおりぶぎょうの報告よりは、眼八が、煙草入れのつつと一緒に抜いた心当たりという一句に、すっかり引きずり込まれて
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、これを忠義に推薦した。忠義は彼の武功を聞いて、彼を抜擢ばってきして高岡郡たかおかごおり郡奉行こおりぶぎょうにした。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
理由は、治水工事で不正のあった商人と、材木奉行、郡奉行こおりぶぎょうらと関係があり、不当の金品を受取った、ということであった。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
半鐘はんしょうの音はその暴風雨あらしの中にきれぎれに響いた。郡奉行こおりぶぎょうの平兵衛は陣笠じんがさ陣羽織じんばおり姿すがた川縁かわべりへ出張して、人夫を指揮して堤防の処どころへ沙俵すなだわらを積み木杭きぐいを打ち込ましていた。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
慢心もあるし、郡奉行こおりぶぎょうの配下というと低く見る癖がついている。で自然と、手先のくせに同心をあごあつかいな物言いぷし、海部側も納まらない、ガヤガヤしばらくもめていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あとのことというのは「郡奉行こおりぶぎょうになる」ことであろう。郡奉行になるとき、この件でかかりあいになっていてはまずい、というのに違いない。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
(帯刀の手続きは、郡奉行こおりぶぎょうのすること。早速、鷲尾わしおのところへ行って、申し出るがよい)
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郡奉行こおりぶぎょうか。……鷲尾覚之丞は少将どのの郡奉行ではないか。なにしに見えたぞ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで安芸は式部に抗議をし、式部は逆に安芸の不当を鳴らした。この争いは四年余日にわたるもので、現在では郡奉行こおりぶぎょうの山崎平太左衛門が預かり、国老による裁決を待つことになっていた。
城下外の地方にいる郡奉行こおりぶぎょうや、出役人へは、早馬や、急使が駈け、陽の三竿かんにかかる頃には、一抹の妖雲にも似た昼霞が、刈屋城の本丸を灰色にいて、昂奮した全藩の空気をひとつにつつんでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そして岸島出三郎は郡奉行こおりぶぎょうだ」
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)