たご)” の例文
仏といえども、道理にたごうことのあるべきはずがない。自分らには現世げんせを安穏にする欲情もなければ、後生ごせに善処する欲情もない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それなればなぜ、そちは早くも約束をやぶったのか。忠円僧正を介しての、そちの上書、誓文せいもんとは、事ごとに約がたごうているではないか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
永「はい実はな時々養いにるじゃ、魚喰うたとて何もとがめはないが、仏の云うた事じゃアから喰わぬ事に斯う絶ってるが、喰うたからって何も其の道にたごうてえ訳ではないのよ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ただ悲しいかな、今のみかどとは、事々御理想もたごうため、そしてまた、義貞輩よしさだはい讒謗ざんぼうのため、朝敵乱賊などと、一たんの汚名はうけられました。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英米仏などの諸外国は兵庫開港が条約期日にたごうのではないかと疑い、兵力を示してもその履行を促そうと協議し、開港準備の様子をうかがっていた際である。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一日もはやく叡慮えいりょを安んじ奉らねばならぬ。——時は秋、汝らの飼馬かいばも肥えておろう。各〻、信長がむねを旨として、おくるるな、たごうな、あだに死ぬな。粉骨砕身ふんこつさいしん、大君のいます都まで押し進めよ
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)