)” の例文
「しかし、六年もって、尋ね出したところで、安南絵の壺を持歩いているわけもなかろうし、金もねえと来たひには、どうにもならない話だろうぜ」
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わずか一年つか過たない内に——花魁のところに来初めてからちょうど一年ぐらいになるだろうね——店はくなすし、家は他人ひとの物になッてしまうし、はははは
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
これほど苦しめられた南京虫も、二日三日とつにつれて、だんだん痛くなくなったのは妙である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五分もたぬ内、自分はもウ客座敷で、姉や娘と一しょになッて笑い興じて遊んでいた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
と仰向にして仏様の首を見ると、時ったから前よりは判然はっきりと黒ずんだ紫色に細引のあとが二本有るから、甚藏はジーッと暫く見て居る処へ手桶を提げて新吉がヒョロ/\遣って来て
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれどもね、おしょうさん僕が若し彼様あんな不幸に会わなかったら、今の僕では無かったろうと思うと、残念で堪らないのです。今日が日まで三年ばかりで大事の月日が、ほとんど煙のようにって了いました。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
五十年位った処が多いとしてあります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それから又二時間つた。
カンテラのじいと鳴るのも、足の底へ清水しみずが沁み込むのも、全く気がつかなかった。したがって何分なんぷんったのかとんと感じに乗らない。するとまた熱い涙が出て来た。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから一刻もったかと思われる時分だった。もう家に帰りついて寝たころのはずである新七が、あわただしい声で、ふたたび山門を打ち叩き、何事か大声でどなっている。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)