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逆卷
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さかまく
乘出し
蒲原の
驛外にて夜も
明渡り
辨慶清水六代御前松並木も打越て
岩淵の渡りに來り
暫時休息なし
頓て富士川の
逆卷水も押渡り岩を
搖上げ
搖下され今にも
逆卷浪に引れ
那落に
沈まん計りなれば八
寒八
熱の
地獄の樣も
斯やとばかり
怖ろしなんども
愚かなり
看々山の如き
大浪は天神丸の
胴腹へ打付たれば
哀やさしも
堅固に
營らへし天神丸も
忽地巖石に打付られ
微塵に
成て
碎け失たり
氣早き吉兵衞は此時早くも
身構へして所持の品は