蹈込ふみこ)” の例文
草原の草を縛り合わせて通りかかった人をつまずかせたり、田圃道に小さな陥穽おとしあなを作って人を蹈込ふみこませたり、夏の闇の夜に路上の牛糞ぎゅうふんの上に蛍を載せておいたり
重兵衛さんの一家 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
つきさてはお浪め富右衞門に艷書ふみを見せたりしかなさけなき仕方なり富右衞門も猶以て遺恨ゐこんなれ店の者共まで今日の始末しまつ思へば/\忌々いま/\いつ蹈込ふみこんで打放し此恨みを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しとしという尋常らしい跫音あしおとが、今はびちゃびちゃと聞えて来た。水ならかかとまでかかろう深さ、そうして小刻こきざみはやくなったが、水田みずた蹈込ふみこんで渡るのをあぜから聞く位の響き。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ものを見ないようにする方がいっていうもんだから、ここはちょうど人通の少い処、そっと目をふさいで探って来たので、ついとんだわな蹈込ふみこんださ、意気地いくじはないな、忌々いまいましい。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でも石滝って処を奥へ蹈込ふみこむと、ちょうど今時分咲いてる花で、きっとあるんだそうだけれど、そこがまた大変な処でね、天窓あたまが石のような猿の神様が住んでるの、おそろしおおきわしが居るの
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)