ひずめ)” の例文
四つのひずめを火と熱せさせるこの言葉は、ラ・フォンテーヌの次のみごとな詩句を全部一つのいかめしい擬声語につづめたものである。
馬はその言葉がわかったように、ひひんと一声高くいなないて、しゃんしゃんぱかぱかと、鈴のひずめの音も勇しく、足を早めに歩き出しました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
すっかり鷹匠の支度になって、藤波とふたりで代地の入り口に控えているところへ、小村井のほうからひずめの音がきこえ
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
われ、おおいに驚きて云いけるは、「如何ぞ、「るしへる」なる事あらん。見れば、容体ようだいも人に異らず。蝙蝠かわほりの翼、山羊のひずめくちなわうろこは如何にしたる」と。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昨日の蹄鉄打換えの際、中隊長殿、小鳩号ゴープチノひずめを傷つけました。軍医補が醋酸を加えた粘土をつけてやりました。目下列外へ出して手綱を曳いてやっております。
接吻 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あられ……北国に住み慣れた人は誰でも、この小賢こざかしい冬の先駆のひずめの音の淋しさを知っていよう。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
後ろへ、踏ん張った後脚のひずめが、土中深くめり込まる。
越後の闘牛 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
人間ともさるともつかない顔付かおつきをし、体のわりには妙にひょろ長い手足の先に、山羊やぎのようなひずめが生えていて、まっ黒な一重ひとえの短い胴着どうぎすそから、小さな尻尾しっぽがのぞいていました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
むかし、ひどい怪我をしたのらしく、右の後脚がうんと外方そとへねじれてしまい、ほかの三本の肢より二寸ばかりみじかい。肢をピョンといちど外へだしてから、探るような恰好でひずめを地面におろす。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
煙は大きな馬のひずめの形となって、空高く消えてゆきました。
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)