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ちよきん
道子は
其辺のアパートをさがして
一人暮しをすることになつたが、
郵便局の
貯金はあらかた
使はれてしまひ、
着物まで
満足には
残つてゐない
始末に
「よせ、よせ。
僕はそんな
貯金なんて、けち
臭い、
打算的なやり
方は
大嫌ひだ。なアに、その
時はまたその
時でどうにかなる。いや、きつと、どうにかするよ」
いかほど
抱主に
歩割を
取られても、
自分一人では
使ひ
切れないくらいで、三
年の
年季の
明ける
頃には
鏡台や
箪笥も
持つてゐたし、
郵便局の
貯金も
万以上になつてゐたが、
帰るべき
家がないので
「ふん、それでまた
貯金でもしたいつていふ
例の
口癖だらう?」
道子は
再び
近処の
郵便局へ
貯金をし
初めた。