ひさ)” の例文
そうして無検束にその酒をひさがんとする女性が、わざと別種の歌をとなえて、古風な酒盛りから男たちを離反せしめたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きのう庫裡くりへ物売りに来たあのひさなのである。またとっさに、あのとき尊氏が言ったことばも思い出されていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
購求者中より同社ひさぐ所の牛乳を持ち来り、これが試験を冀望すれば何時にてもこれに応じ、また世の信用を得んがため毎週一回公衆に同社を縦覧せしむ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
秋壑はある時、数百艘の船に塩を積んでそれをひさがした。すると詩を作ってそれをそしった者があった。
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
生類しょうるいを殺すことを慎み、畿内近国は浦々の猟漁りょうすなどりをいたさず、洛中にては魚鳥をひさぐ物売りの声も聞えないほどでござりましたが、関白殿は世の思わくをもお考えなさらず
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ふためくやひさふたり。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
または売り、白粉おしろい売り、こうじ売りなどのひさから、一服一銭の茶売りおうなまでが“不毛を食う”散所民のうちだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひさはかくれつ闇に。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
頼春は、あたいをきいて、ひさの手にぜにをわたし、早々そうそうに追い立てたが、女はぬかずいたまま、縁の上の尊氏の姿へ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひさはつと鼻ひりて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「てまえどもでも、その天野あまの酒をけていただき、いってみれば、まあ、その下請したうけのひさでございますが」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このへんを往還おうかんするので、すさびた軒の人々は、剣槍けんそうを見ても、驚くなどのふうはなく、かえって、よいお花客とくいとして、蠅のように、酒売りの男どもや、籠を頭にのせたひさなどが
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、よう下屋門しもやもんへ来るひさ(物売り)であろ。……多聞丸、まあそこへ坐れ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺の庫裡くりにもよくさとひさたちが物売りに廻って来る。いまもふと山着姿の小娘が、方丈の庭口をとりちがえて、戻って来たらしく、うろうろしていたが、ここの二人へ気づくと急に
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)