)” の例文
或は苦労が上辷うわすべりをして心にみないように、何時迄いつまで稚気おさなぎの失せぬお坊さんだちの人もあるが、大抵は皆私のように苦労にげて、年よりは老込んで、意久地いくじなく所帯染しょたいじみて了い
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今日けふは白いものを薄くつてゐる。けれども本来のかくす程に無趣味ではなかつた。こまやかなにくが、程よく色づいて、つお日光げない様に見える上を、極めて薄く粉が吹いてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
如何どうして此様こん老人としよりじみた心持になったものか知らぬが、あながち苦労をして来た所為せいでは有るまい。私ぐらいの苦労は誰でもしている。尤も苦労しても一向苦労にげぬ何時迄いつまでも元気な人もある。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)