豎子じゆし)” の例文
クロオデルもしこれを聞かば、或は恐る、黄面くわうめん豎子じゆしいまだ王化に浴せずと長太息ちやうたいそくに堪へざらん事を。(二月五日)
龐涓はうけんみづから・きはまりへいやぶるるをり、すなは(五七)自剄じけいしていはく、『つひ(五八)豎子じゆしせり』と。せいつてかちじようじてことごと其軍そのぐんやぶり、太子たいししんとりこにし(五九)かへる。
百戦孤城力支へず 飄零いずれの処か生涯を寄せん 連城且擁す三州の地 一旅俄に開く十匹の基ひ 霊鴿れいこう書を伝ふ約あるが如し 神竜海をみだす時無かる可けん 笑ふ他の豎子じゆし貪慾たんよくたくましふするを
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それならどうして私に、時と処とを超越した美の存在などが信じられよう。成程なるほどダンテの地獄の火は、今もなほ東方の豎子じゆしをして戦慄せんりつせしむるものがあるかも知れない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もし「お手打の夫婦」以下蕪村の作品を見たとすれば、後代の豎子じゆしの悪作劇に定めし苦い顔をしたことであらう。勿論蕪村の試みた発句解放の善悪はおのづから問題を異にしなければならぬ。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
成程ダンテの地獄の火は、今も猶東方の豎子じゆしをして戦慄せしむるものがあるかも知れない。けれどもその火と我々との間には、十四世紀の伊太利なるものが雲霧の如くにたなびいてゐるではないか。
後世 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)