豊太閤ほうたいこう)” の例文
清吉さんがお勤めのお店にはご身代にも替えがたい品で、昔豊太閤ほうたいこう様から拝領しなましたとかいう唐来の香箱なのでござります。
歴山アレキサンダー王、ナポレオンの功業を察し、ニウトン、ワット、アダム・スミスの学識を想像すれば、海外に豊太閤ほうたいこうなきに非ず、物徂徠ぶつそらいも誠に東海の一小先生のみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
名物ものと言っても、それは祖先のたれ某公が朝鮮役の功労で豊太閤ほうたいこうから貰ったという由緒付きのもの。
豊太閤ほうたいこう朝鮮ちょうせんを攻めてから、朝鮮と日本との間には往来が全く絶えていたのに、宗対馬守義智そうつしまのかみよしとし徳川とくがわ家のむねけてきもいりをして、慶長けいちょう九年のれに、松雲孫しょううんそん文※ぶんいく
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と云うのも、余人は知らず、「大阪生れ」と云うことに誇を抱いている幸子は、幼少の頃から豊太閤ほうたいこう淀君よどぎみが好きなので、関ヶ原の戦には興味が持てなかったせいでもあった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
諸君は今日こんにちのようなグラグラ政府には飽きられただろうと思う、そこでビスマークとカブールとグラッドストンと豊太閤ほうたいこうみたような人間をつきまぜてひとつ鋼鉄のような政府をつく
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
自己のうちへ沈むものは飾りを示すべき相手をもたないから、飾らないのである。豊太閤ほうたいこうは、自己を朝鮮にまでも主張する性情に基づいて、桃山時代の豪華燦爛ごうかさんらんたる文化をいたした。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
豊太閤ほうたいこうの遺徳を慕うあの京大坂の大町人らが徳川幕府打倒の運動に賛意を表し、莫大ばくだいな戦費を支出して、新政府を助けていると聞いては、それを理解するだけの若さをも持っていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
生れおちた時から壮年期はいうまでもなく、豊太閤ほうたいこうとなってからでも、聚楽じゅらく桃山の絢爛けんらん豪塁ごうるいにかこまれても、彼のまわりには、いつも庶民のにおいがちていた。かれは衆愚凡俗をも愛した。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは以前からわたしの持論である。ヨウさんは日々職務の労苦を慰める娯楽としては眼にる書画の鑑賞よりも耳に聞く音楽がはるかに簡易である。豊太閤ほうたいこうは茶を立てたが茶よりも浄瑠璃じょうるりがよい。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)