護国寺ごこくじ)” の例文
青柳町あおやぎちょうから護国寺ごこくじの前を通って、田んぼのあいだを行くと、そこらはもう雑司ヶ谷であった。一面の青い色が、お高をよろこばせた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
王子おうじ宇治うじ柴舟しばぶねのしばし目を流すべき島山しまやまもなく護国寺ごこくじ吉野よしのに似て一目ひとめ千本の雪のあけぼの思ひやらるゝにやここながれなくて口惜くちおし。
あの橋を護国寺ごこくじの方へ渡った角の所の空地で、その首なしの見世物を見たんですが、そこの胴ばかりの人間は、外の見世物の様な女ではなくて
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
運慶うんけい護国寺ごこくじの山門で仁王におうを刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評げばひょうをやっていた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今の音羽おとわ護国寺ごこくじの境内にあったもので、一万八千坪のうちに有名な薬師堂やくしどう神農堂しんのうどうをはじめ、将軍臨場の時のために、高田御殿という壮麗なる御殿まで出来ていました。
あの頃の友達の多くは馬車ばしゃ人力車じんりきしゃで、大切なお姫様、お嬢様、美しい友禅ゆうぜんやおめしちりめんの矢がすりの着物などきて通ったもの。私は養家が護国寺ごこくじの近くにありました。
私の思い出 (新字新仮名) / 柳原白蓮(著)
僕等は少時しばらく待った後、護国寺ごこくじ前行の電車に乗った。電車は割り合いにこまなかった。K君は外套がいとうの襟を立てたまま、この頃先生の短尺を一枚やっと手に入れた話などをしていた。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
田端たばただの、道灌山どうかんやまだの、染井そめいの墓地だの、巣鴨すがもの監獄だの、護国寺ごこくじだの、——三四郎は新井あらい薬師やくしまでも行った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)