わび)” の例文
「さあ、たしか、新富町しんとみちょう市川左団次たかしまやさんが、わびに連れてってくだすって、帰参きさんかなったんですが——ありゃあ、廿七、八年ごろだったかな。」
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
梅子が泣いて見あげた眼の訴うるが如くわびるが如かりしを想起おもいおこす毎に細川はうっとりと夢見心地になり狂わしきまでに恋しさのこころ燃えたつのである。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
女房の前に首をさげて、罪過あやまちわびるなぞは猶々出来ない。なんとか言訳を探出して、心の中の恐怖おそれを取消したい。と思迷って、何故、お隅を打ったのかそれが自分にも分らなくなる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
七蔵しちぞう衣装いしょう立派に着飾りて顔付高慢くさく、無沙汰ぶさたわびるにはあらで誇りに今の身となりし本末を語り、女房にょうぼうに都見物いたさせかた/″\御近付おちかづきつれて参ったと鷹風おおふうなる言葉の尾につきて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)