言句ごんく)” の例文
お松としては、言句ごんくも出ないほど浅ましい感に堪えなかったので、かたえにいたムクをつかまえて、こんなことを言いかけてみました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
沈むのあやまりならずやと言はれて言句ごんくにつまりしとの話あり。写生を念頭に置けばかかる誤はおのづとなくなるなり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
母はこのぞんざいな芳輔よしすけのことばを聞くやいなやひいと声をたててきふした。父も顔青ざめて言句ごんくがでない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
主人はしばらくしてグード・モーニング流にこの難解な言句ごんくを呑み込んだと見えて「なかなか意味深長だ。何でもよほど哲理を研究した人に違ない。天晴あっぱれな見識だ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
説明せつめい形容けいようなにもない——燐寸まつちるといなや、アルコールにをつけるのであるから、言句ごんくもない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
胸に例の一条が在る拙者は言句ごんくつまって了った、然し直ぐ思い返してこの依頼を快く承諾した。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そうしてそのけ目からは、言句ごんくに絶した万道ばんどう霞光かこうが、洪水のようにみなぎり出した。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
凄く叫びてアポローンはねある言句ごんく宣んし曰ふ、 705
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
髪の飾りも要らない、着物も要らない、帯も要らないと言ったお銀様は、お君の呆れて言句ごんくも出でない間に、ついと次の間に行ってしまいました。
*ペ,レーデース! 言句ごんくもてさながら小兒見る如く
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ここに至って竜之助は女の怖るべきことを初めて悟ったかの如く、深い歎息のほかには言句ごんくげなかった有様でしたが、ややあって独言ひとりごとのように
二位の神明かくばかり互ひに言句ごんく相交ふ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
身を任せる——言句ごんくは絶え果てた……男一匹がこの女のためにさんざんに翻弄ほんろうされていたのだ、人を斬ることの平気な竜之助は順序として、ここで