ざき)” の例文
「錢形の親分さん、九百九十兩盜つた野郎を搜し出して、磔刑はりつけにするなり、八つざきにするなり、思ひ知らせてやつて下さい、お願ひ」
「ちょうどなんだな。裏と表と反対の方角に発達する訳になるな。これからの人間は生きながらざきの刑を受けるようなものだ。苦しいだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『三国志』に於ける憎悪、『チャタレイ夫人の恋人』に於ける憎悪、血に飢え、八ツざきにしても尚あき足りぬという憎しみは日本人には殆んどない。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
よい目に逢ったかも知れませんが……何のうらみか存じませぬが、このようなひどい事を致しました者が捕えられましたならば、ざきにしてやりたい位に思います(落涙)。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「親分さん、この敵を取つて下さい。こんなむごたらしい事をして、——家の中の者に違ひありません。つかまへて八つざきにでもしてやつて下さい」
は愛をざきにする。面当つらあてはいくらもある。貧乏は恋を乾干ひぼしにする。富貴ふうきは恋を贅沢ぜいたくにする。功名は恋を犠牲にする。我は未練な恋を踏みつける。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
気絶する程に痛い足を十基米キロメートルも引摺り引摺り、又もあの鉄と火のざき地獄の中へ追返されるのかと思うと、自分自身が苛責さいなまれるような思いを肋骨あばら空隙くうげきに感じた。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「金藏は惡い奴でございます。八つざきにしてもあき足らない奴でございます。が、したのはこの私ぢやございません」
「親分さん、敵を討つて下さい。娘をこんな目に合せた人間を、八つざきにも火焙ひあぶりにもして下さい」