行為おこない)” の例文
旧字:行爲
愛語とは、慈愛のこもった言語ことばをもって、他人によびかけることです。利行とは、善巧な方便てだてをめぐらして、他人の生命をつちか行為おこないです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
梓は歯切はがみをして、と寄って、その行為おこないなじったが、これに答えた警官のことばは、極めて明瞭に、且つ極めて正当なものであった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今までの自分の行為おこないはなはだ不自然で不真面目であるのに思いついた。時雄はその夜、備中の山中にある芳子の父母に寄する手紙を熱心に書いた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
感じやすいもののみが知るようなさみしいこころのありさまにまでお粂の行為おこないを持って行って見るものもある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そしてレルナークの行為おこないことばのように速かであることをお忘れではないはずだ。
呈したのは、この中で思考え行動った俺の行為おこないが、曼陀羅の境地へ悟入る行為であったと教えてくれたのか? ……そんなことはない! ……では、将来曼陀羅の境地へ悟入るようにと啓示しめしてくれたのか?
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三吉叔父の矛盾した行為おこないには、彼女をあきれさせることが有る。叔父は一度、ある演壇へあの体躯からだを運んだ。その時はお延も一緒で、婦人席に居て傍聴した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
布施とは、ただ今も申し上げたごとく、貪慾どんよくのこころをうち破って、他にあわれみを施すことです。持戒とは、規則正しい生活の意味で、道徳的な行為おこないです。忍辱にんにくとは、こらえ忍ぶで、忍耐です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
(もはや、お二方に対しましては、……御夫婦に向いましては、立って身を支えるにも堪えません、一刻も早くこの人畜にんちく行為おこないに対する、御制裁を待ちます。即時に御処分のほどを願います。)
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
到頭岸本は何事なんにびずじまいに、ただその心を行為おこないに表すだけのことに止めて、別れ行くあによめを見送ろうとするような自分をその引越間際まぎわの混雑の中に見つけた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日頃のお話ぶり、行為おこない御容子ごようす
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠く北海道の方に住む園子の生家さとの人達の耳にまでも伝わる時があるとしたら。直接に自分の行為おこないに関係の無い人達のことを考えたばかりでもこの通りであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
問い詰められた時、いくらも方法があろうのに、どうしてその方はそんな行為おこないに出たかと言われても、わたしには自分の思うことの十が一も答えられませんでした。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸本は、あの病人の個性というものをよくも見究みきわめずにただ病気のみを診断しようとする医者のような人達から一口に自分の行為おこないさばかれることを非常に残念に思った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
狂人きちがいじみた自分の行為おこないはどんなに田辺の小父さんや、姉さんや、それからあのお婆さんを驚かし、かつ怒らせたであろうと想像した。大川端の兄の驚きと怒りと悲みとをも想像した。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、声を低くして、父の顔色が変るほど今日までの行為おこないを責めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)