蟾蜍ひきがへる)” の例文
どうぞしてものにせうとまっしゃるのぢゃが、あのよなひとふよりは、わし蟾蜍ひきがへるうたはうがましぢゃ、とうてな、あの蟾蜍ひきがへるに。
白い鵞鳥は蟾蜍ひきがへるとなり、黄金の匙は怪しいニツケルのナイフとなり、酒は酢となり、きりぎりすは蚯蚓みみづとなり
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つめたいつきひかりされて、人目ひとめかゝらぬいしなか封込ふうじこめられた蟾蜍ひきがへるごとく、わがみにく鉱皮くわうひしためられてゐるとき、ほかのひとたちは清浄しやうじやう肉身にくしん上天じやうてんするのだらう。
蟾蜍ひきがへるに向つて、美とは何ぞやと尋ねて見よ。蟾蜍は答へるに違ひない。美とは、小さい頭から突出た大きな二つの團栗眼どんぐりまなこと、廣い平べつたい口と、黄色い腹と褐色の背中とを
さうして僅かばかりの物質——人骨や、齒や、瓦や——が、蟾蜍ひきがへると一緒に同棲して居る。そこには何もない。何物の生命も、意識も、名譽も。またその名譽について感じ得るであらう存在もない。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
蟾蜍ひきがへるよっ。——なにもこはい事は無い。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しろがねの小さき匙もて蟾蜍ひきがへるスープ啜るもさみしきがため
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
墓と、石と、蟾蜍ひきがへるとが、地下で私を待つてるのだ。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
さよなら——あの蟾蜍ひきがへるは僕だ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
蟾蜍ひきがへる幽霊のごと啼けるあり人よほのかに歩みかへさめ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蟾蜍ひきがへるは𢌞つて通る。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
蟾蜍ひきがへるの啼く
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)