虐待ぎやくたい)” の例文
『その性狂暴、奢侈しやしに長じ、非分の課役をかけて農民を苦しめ、家士を虐待ぎやくたいし、天草の特産なる鯨油げいゆを安値に買上げて暴利をむさぼり』
それわかつてゐる。本人の病気にけ込んで僕が意趣らしに、虐待ぎやくたいでもすると思つてるんだらうが、僕だつて、まさか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その人のひどい行ひがあなたの心によく/\特別な深い印象を與へたのねえ! 私の心にはどんな虐待ぎやくたいだつて、そんなに燒きつけられはしないのよ。
虐待ぎやくたいはずゐぶんひどいやうです。或晩あるばんなぞ、鉄瓶てつびん煮湯にえゆをぶつかけて、くびのあたりへ火焦やけどをさしたんでせう。さすがにおどろいて、わたしのところへやつてたんです。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
息子の家にゐるのが彼の苦痛であつたのは、何も息子夫婦が彼を虐待ぎやくたいしたからでもなく、物質的に苦労させたからでもない。それどころか、彼らは老人をいたはり、豊富に着せ、食はせてゐた。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
めひのお梅が、日頃から虐待ぎやくたいされて物置に寢泊りして居ることに氣が付いて、若しや氣取けどられたんぢやあるまいかと、はりに吊つて俺の眼から隱さうとしたんだ。
竹村たけむらあきれてしまつた。かれ郷里きやうり新聞しんぶんで、大久保おほくぼ奈美子なみこ虐待ぎやくたいして、警察けいさつわづらはしたなぞのうはさみゝにしてゐたが、それもあなが新聞記者しんぶんきしや誇張こちやうでもなかつたやうにおもへた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
平次に斯う指摘されると、この五年の間、養父母に加へた虐待ぎやくたい凌辱りようじよくが、あり/\記憶に蘇生よみがへるのです。
母親が續いて亡くなつた後は、持つて行つた數千兩の財産を、すつかり取り込んで了つて、妹のお梅を、出て行けがしに虐待ぎやくたいして居る淺ましい孫右衞門だつたのです。
十二になるお玉が、どんなにお皆に虐待ぎやくたいされたか、それは家中の者が皆んな知つてをりました。