荒神あらがみ)” の例文
これで、毎年まいねんむららして、人身御供ひとみごくう荒神あらがみ正体しょうたいが、じつはさるものであったことがかって、むらのものはやっと安心あんしんしました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
残らず、一度は神仏の目の前で燃え輝いたのでございましょう、……中には、口にするのもはばかる、荒神あらがみも少くはありません。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
変な形をしたへさきに、槍を持った『海の荒神あらがみ』の像がほりつけてある。檣には星の軍艦旗が、青く、美しくひらひらとひるがえり、敵ながらも勇ましい出征ぶりである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
本朝出来の像としてはまず、此程物凄い天部てんぶの姿を拝んだことは、はじめてだ、と言うものもあった。神代の荒神あらがみたちも、こんな形相でおありだったろう、と言う噂も聞かれた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「なんのなんのこの四人がたとえ一度にかかったとて、貧乏ゆるぎもすることか、それに第一ここは霊地。軍神荒神あらがみのまします所ゆえ、そんな狼藉ろうぜき禁物きんもつ禁物、神罰のほどがおそろしい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
陸中国閉伊郡船越村字田ノ浜の鎮守に荒神あらがみ神社というのがある。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
おしはかるだに、そのさがおそろしときく荒神あらがみ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
能登では、産婦のまだ七十五日を過ぎないものを、(あの姉さんは、まだ小屋のうち、)と言う習慣ならわしのあるくらい、黒島の赤神しゃくじん赤神様あかがみさまと申して荒神あらがみで、きびしく不浄を嫌わるる。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おしはかるだに、そのさがの恐しときく荒神あらがみ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)