草藪くさやぶ)” の例文
松と草藪くさやぶ水辺すいへんの地面と外光と、筵目むしろめも光っている。そうして薄あかい合歓ねむの木の花、花、花、そこが北島、むこはるかが草井の渡し。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
本門ほんもんの方から往くと遠くて無趣味であるから、その草藪くさやぶを通って旅館の裏手から入ろうとしているところであった。
草藪の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこではつるが長いつばさをひろげて飛びまわり、ペリカン鳥はミモザのえだから人々を見おろしています。しげった草藪くさやぶが、象の重たい足にみつけられています。
今でもその住んでゐた城のあとはその村の西の一隅に草藪くさやぶになつて残つてゐるが、半ば開墾されて麦畠、豆畑、桑畑くはばたけになつてゐるが、それでもやかたあとだけは開墾するとたゝりがあると言つて
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
今鹿の逃げて行った方の丘を受け持つ事になったから僕は叔父さんと二人ふたりしてほとんど足も入れられないような草藪くさやぶの中をかき分け踏み分けやっとの思いでほどよいところに持ち場の本陣を据えた。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
益雄と画家は茶をそこそこに飲んで庭へおり、裏口の針金をもうしわけに引いた柵をまたいで草藪くさやぶへ往った。益雄のふところには女に持って来た化粧道具が入っていた。
草藪の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
川原の草藪くさやぶの中にはやはりキリギリスが鳴いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)