花鳥かちょう)” の例文
利助りすけ陶器とうき特徴とくちょうは、その繊細せんさい美妙びみょうかんじにありました。かれ薄手うすでな、純白じゅんぱく陶器とうきあい金粉きんぷんとで、花鳥かちょうや、動物どうぶつ精細せいさいえがくのにちょうじていたのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家康は花鳥かちょう襖越ふすまごしに正純の言葉を聞いたのち、もちろん二度と直之の首を実検しようとは言わなかった。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
豊国はかくの如く年々各座の当狂言あたりきょうげんを描きてまざりしのみならずまた別に俳優の衣裳いしょうかつらをつけざる日常の姿を描きこれに四季折々の花鳥かちょうあるひは景色けいしょくを配合したり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小女こむすめ羽織はおり友禅ゆうぜん模様は、蒼白あおじろい光の燃えついているように、暗い中にはっきりと見えていた。眼をすえて好く見ると、その模様は従来見なれた花鳥かちょうの模様ではなかった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
四季の美を歌った詩人や、花鳥かちょうの美を描いた画家が、どんなに多いことでしょう。前にも述べました通り、寒暖の二つを共に有つこの国は、風土に従って多種多様な資材に恵まれています。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
社会の表面に活動せざる無業むぎょうの人、または公人こうじんとしての義務をへて隠退せる老人等の生活に興味を移さんとす。墻壁しょうへきによりて車馬往来の街路と隔離したる庭園の花鳥かちょうを見て憂苦の情を忘れんとす。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)