ぶね)” の例文
二人の話の途切れに……すぐ近くの杭のかかぶねとまから、またしても、さっきのかんだかい赤子の泣き声が、水谺みずこだまをよんでいた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江口や神崎がこの川下のちかいところにあったとすればさだめしちいさな葦分あしわぶねをあやつりながらここらあたりを徘徊はいかいした遊女も少くなかったであろう。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ベカぶねに乗って、コイコイコイコイと、家鴨を呼んでいるじいやに、土手の上で、危いから帰って来いと呼んでいるのを、橋の上の人が、大声で伝えているものも見える。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
春のあたたかい日のこと、わたしぶねにふたりの小さな子どもをつれた女の旅人たびびとがのりました。
飴だま (新字新仮名) / 新美南吉(著)
小犬二匹石炭ぶねのふなべりを鳴けり狂へり夜に叫び居り
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
白帆上げたる瀬越せごぶね
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
散所民の板小屋やかかぶねとまに、チラチラ灯を見る夕となっていた。すると、街から出屋敷の長い土塀の外へかけて
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜も約束やくそくを信じてわたしを待っている女のことをおもいうかべると、わたしはもはやこらえることができなくなって、岸をはなれたわたしぶねを船頭にたのんでもとの岸にかえしてもらい
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
まみれぶね
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)