背丈せた)” の例文
巌がぐるりとえぐれて地の底深く陥窪おちくぼんだ処が脚下あしもとに見えた。李張は躊躇ちゅうちょせずにその巌窟いわあなへはいった。人の背丈せたけ位の穴がななめにできていた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私が訊いたのは何も背丈せたけのことばかりではない。西洋人にして角逐かくちく出来る体力や気魄きはくついて探りを入れたのである。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
極めてなだらかな起伏が幾重にもつらなっていて、その丘も平原も全部が背丈せたけ一尺余りの雑草でつつまれているだけである。木はほとんど見当らない。
永久凍土地帯 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
又、ヒョロ子も同じ村に生れた娘でしたが、背丈せたけが当り前の人の倍もあるのに、身体からだはステッキのように細くてせていましたので、こんな名前を付けられたのです。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
背丈せたけの図抜けて高い彼れは妻を見おろすようにしてこうつぶやいた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
へん山寨さんさいにいるうちに、山兵のうちからあなたの背丈せたけ風貌にそっくりな者を選び出し、それにご辺のよろいかぶとを着せ、また狼牙棒ろうがぼうい持たせて、燕順、王矮虎わいこらの手下二百とともに、夜半
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
グイ松は樺太の特にツンドラ地帯に特有な落葉松からまつであるが、この原野のものはどれも背丈せたけは一間か二間に満たないもので、眺めの邪魔になることはなかった。そしてどれも均整のとれた姿であった。
ツンドラへの旅 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)