聴衆ききて)” の例文
旧字:聽衆
そのといつたら美しい女のすゝり泣きをするやうな調子で、聴衆ききては誰一人今日までこんな美しい音楽を耳にした事はないらしかつた。
その間も楽堂の舞台では、まずい音楽が続けられていた。そして聴衆ききては根気よく静かに耳を傾けている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
有島氏がこゝまで話して来ると、聴衆ききてまじつてゐた西洋婦人は鷦鷯みそさゞへのやうに口をとがらせて「ち、ち、ち……」と鋭い音を立てた。
それは伊太利イタリアの音楽隊で、モールをちりばめた服装から指揮者コンダクター風姿スタイルから、かなり怪しげな一団であったが、「伊太利人」という吹聴のためか、聴衆ききては黒山のように集まっていた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
成程結構な演奏ではあるが、さうかといつて、一弗六十五仙の先刻さつき提琴ヴアイオリンと比べて、音色ねいろに格別のちがひはなかつた。それにつけても聴衆ききても思つた。
「一体これまでの日本料理は、見た眼にはなかなか美しいが、味はつてみると一向うまくありませんね。」と尾崎氏は聴衆ききてが少いのが物足りないやうに
附近あたりに立聴きをする神様は居ないし、幾らお説教がまづかつたところで、聴衆ききては耳に手をやつて、波のなかに飛び込む訳にも往かないしするから、牧師は落つき払つて
聴衆ききてかい。」外交官は胡散うさんさうにおとがひまはりを撫で廻した。「聴衆ききてはたつた一人だつたよ。」
前にも立優たちまさつた出来で、聴衆ききては唯もう夢中になつて手をつて驚嘆した。そののぼせた容子ようすを見てゐたエルマンは、懐中ポケツトからハンケチを取り出して、そつと額の汗を拭いた。
唯何か音楽が始まると、聴衆ききてが一度に帽を脱いで起立をするから、そんな折に、やつと
「さう、それは結構だつたのね。そして聴衆ききては幾人位あつたの」