美酒うまざけ)” の例文
……おまえと、花世の婚礼に、わしは、世の中の何ものよりも強い、何ものよりも真実な、真っ赤な、神の美酒うまざけをここへたたえて来たんじゃ。驚いてくれるな
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芬々ぷんぷん薫る処を、波々と、樽からいでくれたから、私はごくごくと傾けた。美酒うまざけの鋭さは、剣である。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わしも寂しい身の上だ。不足のない身分ながら、いつも寂しく日を送って来た。だがこれからは慰められよう。私は事業を恋と換えた。恋の美酒うまざけに酔いれよう。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そは只しき夢を見るべく運命づけられた人間のあこがれの幻影で、愛は美酒うまざけの一場の酔に過ぎないことは、千古の鉄案として動かせないのであるが、我れ感じ、我れ生きて
愛人と厭人 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
われ、かなしき心にその美酒うまざけみ渡る心地ならめ。二郎は歓然として笑いまた月を仰ぎぬ。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「沈黙は貧しさほどに美しく尊い。あなたの沈黙を私は美酒うまざけのように飲んだ」
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いとしい人や美酒うまざけをとり上げるとは罪だぞ。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
美酒うまざけ、ほほゑみ、ともに匂ひかはし
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あゝよしさらば美酒うまざけ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「酒もう。重五の祝いだ、土地ところ美酒うまざけみながらさいごの軍議をとげようぞ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くれない美酒うまざけにまさるものはなかった。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
あゝよしさらば美酒うまざけ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と、すすめていたが、ふたりの仲はたやすく美酒うまざけのごとくかもされては来なかった。——天皇からたもうた女と、賜わった男とである。いわばまたその初夜だった。——人はやはり品ではない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美酒うまざけを墓場の土にふりそそいで。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
手にとる酒は美酒うまざけ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「兄上、ちとばかり、酒瓶さけがめ美酒うまざけさげて参りました」宗業むねなりが訪れた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手にとる酒は美酒うまざけ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
……和上わじょう、そのような美酒うまざけをわれらへひとつ馳走して給わるまいか
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雑魚ざこと怪魚の騒動の事。また開く琵琶亭の美酒うまざけのこと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)