縹渺へうべう)” の例文
(le samourai)されどその絹の白と漆ときんとにいろどられたる世界は、かへつて是縹渺へうべうたるパルナシアンの夢幻境のみ。
((磁石は無いが方角は太陽の位置で分る))わたくし一時いちじ喫驚びつくりしたが、よくかんがへると、これはなに不思議ふしぎでない、今迄いまゝでそれと心付こゝろつかなかつたのは、縹渺へうべうたる大洋たいやうめん
烈々たる炎の如き感情の動くまゝに、その短生たんせいを、火花の如く散らし去つた彼女の勝気な魂は、恐らく何の悔をも懐くことなく縹渺へうべうとして天外に飛び去つたことだらう。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
又遙かに——縹渺へうべうの彼方には海上としては高過ぎ、天空としては星の光りとも見えぬ、海とも空ともつかぬあたりに天草のいさり火が吹きすさぶこがらしに明滅する如く微かにまたゝいてゐるのであつた。
「是は武蔵の国隅田川の渡し守にて候」と云ふ宝生新ほうしやうしん氏の詞と共に、天さかるひなの大川の縹渺へうべうと目の前に浮び上がる所は如何にも静かに出来上がつてゐる。
金春会の「隅田川」 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
機關室きくわんしつはたらことあたはず、詮方無せんかたなきまゝ、つてつ、つ、艦首かんしゆから縹渺へうべうたる太洋たいやう波濤なみながめたり、「ブルワーク」のほとりから縱帆架ガーフひるがへ帝國軍艦旗ていこくぐんかんきあほいでたり、機關砲きくわんほうのぞいてたり