絹足袋きぬたび)” の例文
浅黄絖あさぎぬめひきかえしに折びろうどの帯をしめ、薄色の絹足袋きぬたびをはいた年増としま姿は、又なくえんに美しかった。藤十郎は、昔から、お梶を知っている。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
淡紅色ときいろ紋絽もんろ長襦袢ながじゆばんすそ上履うはぐつあゆみゆる匂零にほひこぼして、絹足袋きぬたびの雪に嫋々たわわなる山茶花さざんかの開く心地す。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
文明の詩は金剛石ダイヤモンドより成る。むらさきより成る。薔薇ばらと、葡萄ぶどうの酒と、琥珀こはくさかずきより成る。冬は斑入ふいりの大理石を四角に組んで、うるしに似たる石炭に絹足袋きぬたびの底をあたためるところにある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがてぞ、内賑うちにぎやかもんのひそめく輪飾わかざり大玄關おほげんくわんより、絹足袋きぬたびかる高廊下たからうかく。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)