終熄しゅうそく)” の例文
ゆえに地に向って、血をおおうことなくいつまでもこれを地にとどめてその血の号叫さけびをして永久に終熄しゅうそくすること無からしめんことを求めたのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
今日に至って終熄しゅうそくしたというわけではないが、噴烟ふんえんはここ十里と隔たった高山の宮川の川原の土手までも、小雨のように降り注いでいるのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
笠置、赤坂は一おう終熄しゅうそくしたものの、伊賀、伊勢、吉野、紀州、西国にまでひそむ正体知れぬ宮方のすべてまでが消えてしまったわけでもない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人命終熄しゅうそくの一歩手前でうろうろしているばかりなり。天才は一人もいない。自分だけが天才と思っているからよ。それ故、私たちはダダイスト。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
すなわち外交方面では、欧洲大戦が終熄しゅうそくに近づいて米国が世界の資本王となり得べき可能性が確立した時である。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
虚妄うそ烽火のろしには驚かんよ。あの無分別者の行動も、いよいよこれで終熄しゅうそくさ。だって考えて見給え。現在僕の部下は、あの四人の周囲をたてのように囲んでいる。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これらの着想を模型でなくて、本物として実現することができたならば、世界の動乱は忽ちにして終熄しゅうそくするのです。真の科学者の血潮を湧き立たせるに足る題目ではありませんか。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其の団体は大戦当時ですら敢然不戦論を主張し平和論を唱導して居たが大戦終熄しゅうそく後は数万の未亡人を加えて英国の一大勢力となって来た。やがてアグネスは女学校へ通うようになった。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
縁談の方が先頃から一時終熄しゅうそくしているのを幸い差当りこの難物から紹介する。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この取引が終熄しゅうそくする暁には、吾々は合理的に、久しからずして将来の旅行者は、アフリカの諸民族の社会状態に関し、パアクが画いているよりも好ましい描写を吾々に与え得るものと、希望し得よう。
東大寺炎上の状景、この一節によって完璧かんぺきであろう。壊滅の壮麗を叙し、炎の熱気をさえ感じさせる文章である。大仏殿はじめ各堂宇殆ど灰燼に帰し、聖武帝御願の大仏もここに終熄しゅうそくしたのであった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
甲府を荒らした悪病も、やがて終熄しゅうそくする時が来た。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
臣が多くを申しあげないでも、ご聡明な帝には、くお気づきと存じますが、天下も今、ようやく平静に返ろうとして地方の乱賊も終熄しゅうそくしたところです。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから間もなく大正八年の春先になると、一旦、終熄しゅうそくしていた爆弾ドン漁業がモリモリと擡頭して来た。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同時に、今となって思えばそれがぼくの尊い、あんにゃもんにゃ時代の終熄しゅうそくでもあったのである。
自然、その方面のたたかいも終熄しゅうそくして来た頃である。——ある日、一色右馬介が、遠い河内の使いから帰って来た。そして、さっそく、太宰府のえいに、主君尊氏を訪うていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとまず諸国の戦乱や私闘も一応は終熄しゅうそくをつげ、しばしは泰平に似た幾年かは続こうが——さて、おたがいが、五十、六十の年となった頃、果たして、世の統一が続いていようか
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長期の風雲時代は、もう終熄しゅうそくして来たのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、終熄しゅうそくの報が到り、つづいては