素氣そつけ)” の例文
新字:素気
つか/\と行懸ゆきかけた與吉よきちは、これをくと、あまり自分じぶん素氣そつけなかつたのにがついたか、小戻こもどりして眞顏まがほで、ひとしばだたいて
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
皆川半之丞の浪宅へ、幾度か使をやりましたが、二晩稽古に來たつ切り、あとは顏を見せない——といふ素氣そつけない挨拶です。
驚いた老婆はさも胡亂うろん臭さうに私を見詰めてゐたが、此頃こちらでは一泊以上の滯在はお斷りすることになつてゐるからといふ素氣そつけもない挨拶である。
比叡山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「うん」とこたへただけであつたが、その樣子やうす素氣そつけないとふよりも、むし湯上ゆあがりで、精神せいしん弛緩しくわんした氣味きみえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何だかけちくさくて、素氣そつけなくつて、よそ/\しいやうな氣がしますね。私は何かもう少しその挨拶に附け加へたいな。握手をしたら、例へて云へばね。
イワン、デミトリチは素氣そつけなくふ。『わたくしかまはんでください!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あぢ素氣そつけもないことをツて、二人はまただまツてつづける。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
このときも、彼は私の口にした素氣そつけない返答には心を留めないで、彼特有のある微笑ほゝゑみを浮べて私を見た。而もそれは滅多めつたにしか表はさないものであつた。
小柄で、色が淺黒くて、あまり良い男振りではありませんが、突き詰めた樣子や、一生懸命な眼の色に、何にか妥協の出來ない正直さを見ると、素氣そつけなく追ひ返しもなりません。
しかしこゝにゐる二人の人間は、それを缺いてゐる爲めに、一人はこの上もなく辛辣な性質となり、一人は情ない程味も素氣そつけもない性質となつてしまつた。