素捷すばや)” の例文
又、彼等は先祖代々深山幽谷しんざんゆうこくに棲んでいるから、山坂を駆歩かけあるくことは普通の人間よりも素捷すばやいであろうし、腕力もまた強いかも知れない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
作右衛門素捷すばやく走り戻って本陣に入り、首を大将の見参げんざんに備え、ここに名生の城と申す敵城有って、先手の四人合戦仕った、と述べた。サアここである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたしはその余りに素捷すばやいのに驚かされながら、正面に向き直った彼の顔を更にじっと見つめると、彼の顔は一向に女らしく見えなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ト、下駄の歯の間にたまった雪に足を取られて、ほとほところびそうになった。が、素捷すばやい身のこなし、足の踏立変ふみたてがえの巧さで、二三歩泳ぎはしたが、しゃんと踏止まった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その行動があまりに素捷すばやいのと事があまりに意外であるのとで、周囲の人びとも呆気あっけに取られて眺めているばかりであった。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そいつはなかなか素捷すばやい奴で、山城屋の女房と女中が奉行所へ呼ばれたと聞くと、すぐに夜逃げをして、どこへ行ったか判らなくなったんです。
まして鷹のような素捷すばやい鳥はどこへ飛んで行ってしまったか判らない。それを探し出すというのは全く困難な仕事であると、さすがの半七も胸をかかえた。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
巡査は心に喜んで、闇を探りながらと寄って、の一匹の襟首えりくびを掴んだ。が、敵も中々素捷すばやかった。たちまその手を払い退けて、口にくわえたる刃物を把直とりなおした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「畜生、素捷すばやい奴だ。よもや家へ帰りゃあしめえが、まあ念のために行ってみよう」
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その場合には矢張やはり一般の盗賊ぬすびとの如くに、なるべく白昼ひるを避けて夜陰に忍び込み、鶏や米や魚や手当り次第にさらって行く。素捷すばやいことは所謂いわゆるましらの如くで、容易にその影を捕捉することはできぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勇吉は金兵衛の遠縁の者で、やはり十一の年から奉公に来て、まだ六年にしかならないが、年の割にはからだも大きく人間も素捷すばやい方で、店の仕事の合い間には奥の用にも身を入れて働く。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は、まったく猫のように素捷すばやかった。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)