紛糾こぐらか)” の例文
二人は病床の傍で、看護婦のいない折々に、先刻さっきからお今のことで、一つ二つ言い争いをしたほど、心持が紛糾こぐらかっているのであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
乃至ないし眞夜中まよなかうまたてがみ紛糾こぐらからせ、また懶惰女ぶしゃうをんな頭髮かみのけ滅茶滅茶めちゃめちゃもつれさせて、けたら不幸ふかう前兆ぜんてうぢゃ、なぞとまするもマブが惡戲いたづら
一足ひとあしもりはひればはげしくたゝ太鼓たいこおとが、そのいそいでとほくへひゞるのを周圍しうゐからさへぎめようとして錯雜さくざつしてしげつてみき小枝こえだ打當ぶツつかつて紛糾こぐらかつてるやうに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夫婦間の感情は、糸がもつれたように紛糾こぐらかっていた。お作はもう飽かれて棄てられるような気もした。新吉はお作がこのまま帰って来ないような気がした。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
妙に紛糾こぐらかった親類筋をたどってみると、その家とお今の家との、遠縁続きになっていることや、その製糸工場の有望なことや、男が評判の堅人かたじんだということなどが
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
手紙ではとても言い尽せない周囲の紛糾こぐらかった事情や、自分の生活状態について
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いろいろ紛糾こぐらかっている家庭の不快さを紛らしに、ふいと少しばかりのマネーを懐にして、海辺へ出て行った留守のまに、子供の帽子などを懐にして、うちを見舞ってくれる人などもあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
紛糾こぐらかった事務に没頭した彼の忙しい心に、時々お今のことが浮んだ。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)