うすぎぬ)” の例文
僧堂を辭し去るあした、大空は灰色のうすぎぬを被せたる如くなりき。岸には腕たしかなる漕手こぎて幾人か待ち受け居て、一行を舟に上らしめたり。
うつるにつれて黄蝋の火は次第にすみにおかされて暗うなり、燭涙しょくるいながくしたたりて、ゆかの上にはちぎれたるうすぎぬ、落ちたるはなびらあり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それは、底のほうから、もくもくと噴油のような血が湧き出したと見る間に、その層が、水面に高くぐいと盛りあがったように感ぜられると、そこを、うすぎぬのような横波が、サッと掃いた。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
時うつるにつれて黄蝋の火は次第に炭のにおかされて暗うなり、燭涙ながくしたたりて、床の上にはちぎれたるうすぎぬ、落ちたるはなびらあり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我は僧等の姫が頭上のうすぎぬぎて、雲の如き髩髮ひんぱつの亂れちて兩の肩をおほへるを見、これを斷つ剪刀はさみの響を聞きつ。