粗雑ぞんざい)” の例文
旧字:粗雜
と閣下は両大佐丈けに話す時には部下と思っているから、自然言葉が粗雑ぞんざいになる。両大佐は又閣下のお説に反駁を加えない。
閣下 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と盆の上に茶呑茶碗……不心服な二人ににん分……焼海苔やきのりにはりはりは心意気ながら、極めて恭しからず押附おッつけものに粗雑ぞんざいに持って、お蔦が台所へあらわれて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真実ほんとうに私ほど苦労したものはありませんよ。」と、お増は粗雑ぞんざいな障子の張り方をしながら、自分のことばかり語った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夏の事とて明け放した下座敷をのぞきながら、お千代が窓のそばへ蹲踞しゃがんで足の爪を切っている姿を見るや、いなや、また例のしまりのない粗雑ぞんざいな調子で
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私に語る言葉の端々が妙に粗雑ぞんざいになってくるに反して、その死んだ人間のことをいう時にはひどく思いやりのある調子になりながら、火鉢の傍に坐っている若奴の顔をかえって
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
床の低いのと屋根の低いのを見ても、貸家建ての粗雑ぞんざい普請ふしんであることがわかる。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と、粗雑ぞんざいに太く云った。が、口覚えに練習した、腹案の口上が中途で切れて、思わず地声を出したらしい。……で、頭を下げて赤熊は橋の上に蹲る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「千代香じゃないか、丸髷に結ってやがるな。うまくやったなア。」としまりのない、大きな声でわざといけ粗雑ぞんざいな調子で物を云うのがこの男の癖である。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と妙子さんは病苦の中にも態〻粗雑ぞんざいな言葉を吟味して女房振りを見せているのに
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「そう、じゃ行こうかねえ。すぐそこらにいくらもあるよ」いけ粗雑ぞんざいな口でいう。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
粗雑ぞんざいに廊下へ上る。先生に従うて、浮かぬ顔の主税と入違いに、綱次は、あとの戸を閉めながら
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とおかみさんは急に言葉が粗雑ぞんざいになった。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お千世は引入れられたように返事して、二人の目のじっと合う時、自働電話に備付そなえつけの番号帳がパタリと鳴る。……さきに繰って見たものが粗雑ぞんざいに置いたらしい、ひもって落ちた音。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何、そういう次第ではないんです。いけ粗雑ぞんざいなんです。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毛彫浮彫の花鳥草木……まあ私のお取次ぎは粗雑ぞんざいですよ。