ささ)” の例文
悲しい声もくは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥はささむらや草むらに首を突込み、ただ暁のそらを切ない心に待焦るるであろう。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
庭の正面に大きな笠松の枝が低く垂下たれさがって、添杭そえぐいがしてあって、下の雪見灯籠ゆきみどうろうに被っています。松の根元には美しいささが一面にい茂っていました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
この加頭一家は、十一月のとりの町には吉原土手へ店を出した。熊手のかんざしを売ったこともあったが、ささに通したお芋を売った。がりがりの赤目芋だった。
節句のちまき貰いしが、五把ごわうちささばかりなるが二ツありき。あんず、青梅、すももなど、幼き時は欲しきものよ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大江の上には帆走ほばしっているやや大きい船もあれば、ささの葉形の漁舟ぎょしゅうもあって、漁人のつりしているらしい様子も分る。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お百姓がお客様なのであるが、売手におそれて近寄らないのと、売る方でも気まりが悪いので、七夕たなばたの星まつりのようにささの枝へ幾個いくつもくくりつけて、百姓の通る道ばたに出しておいてぜにに代えた。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)