築地ついぢ)” の例文
そのまま畑に添うて、やがて左手の半ば朽ちかゝつた築地ついぢの中門を潛つて、とろ/\と四五間も降るとこの村の唯一の街道に出る。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
ご存じのように道は、遠山三之進様の御屋敷まで真ッ直ぐに築地ついぢつづき、ほかに曲るところもそれるところもござりませぬのに、皆目かいもく姿が見えませぬ。
水棹みさをとれ、土橋どばしくぐれ、鳰鳥の火のあたま、いま夕日、それとかかれと、我が仰ぐやかた築地ついぢ、濠めぐるここをよろしと、采配やささとかかれと、前うちの金の鍬形、紙鎧、桜縅の大将我は。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きたない子が 築地ついぢからひよつくりとびだすのもうつくしい
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
曠野ひろのなる蒙古の築地ついぢ一隅ひとすみに物見つくれど見んものは無し
築地ついぢの草床、涙を我もれつ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
松高く築地ついぢは低き學び
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
れし築地ついぢにみだれたる
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
主水之介は、ぬッと築地ついぢわきに佇んだままで、薄闇の向うの門先を見守りました。
護摩たくと築地ついぢの照りに映り来る人かげ見れば日もけたらむ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ゆふ早き庫裏くりのはひりは日たむろと築地ついぢめぐらしてあか中門ちゆうもん
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
池向ひ築地ついぢに明る冬ののけ寒き下坂くだり鹿りき見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)