突放つっぱな)” の例文
さて、……町奉行まちぶぎょう白洲しらすを立てて驚いた。召捕めしとつた屑屋を送るには、槍、鉄砲で列をなしたが、奉行役宅やくたく突放つっぱなすとひきがえるほどの働きもない男だ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
無慈悲にその肩を左に開くと、あなどりきっていた高部がよろめいた途端を、左の手で突放つっぱなしたと見る間に
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
七内は、突放つっぱなして、足蹴にかけようとしたが、日吉はひょいと、退いて、その足先をかわしていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あら。兄さん。」と寄り添うのを突放つっぱなして、「何が兄さんだ。ここにおれが居ようとは思わなかったろう。ざまア見ろ。男をだますなら、もうすこし器用にやれ。」
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
王鬍は君子でないと見え、遠慮会釈もなく彼の頭を五つほど壁にぶっつけて力任せに突放つっぱなすと、阿Qはふらふらと六尺余り遠ざかった。そこでひげおおいに満足して立去った。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
故人成田屋なりたやが今の幸四郎こうしろう、当時の染五郎そめごろうを連れて釣に出た時、芸道舞台上では指図を仰いでも、勝手にしなせいと突放つっぱなして教えてくれなかったくせに、舟では染五郎の座りようをとがめて
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だまっていたんじゃ、わからない、そう突放つっぱなされても、それは、仕方のないことなんだ。真理は感ずるものじゃない。真理は、表現するものだ。時間をかけて、努力して、創りあげるものだ。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、突放つっぱなして部屋から出ていった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「勤番の役人様が、今度はあべこべに、油を絞られて突放つっぱなされるという図になってはやりきれねえ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
推し返す、遣返す——突込つっこむ、突放つっぱなす。引立ひったてる、引手繰る。始末がつかない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、アンは、突放つっぱなすように言って
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
皆まで聞かず、英吉は突放つっぱなしたように
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)