究竟つまり)” の例文
究竟つまり名義だけあればよろしいので、私の方では十分貴方を信用してをるのですから、してその連帯者に掛らうなどとは思はんのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
猿か人間か到底とても判らぬ、究竟つまりは一種の山𤢖と云うものであると答えるより他は無かった。塚田巡査もの解釈にはくるしんだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
門司ではバナナや鳳梨あななすの匂を嗅ぎながら税関の前に出るとすぐ煤烟のなかを小蒸汽に乗つて関門海峡を渡つたので都会と云ふ印象よりも殖民地といふ感が強かつた、究竟つまり
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
気の毒な思をしてお前との約束を変易へんがへするのも、私たちが一人娘をよそへ遣つて了ふのも、究竟つまりは銘々の為に行末好かれと思ふより外は無いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
如才じょさいないお政は絶えず笑顔を見せているが、対手あいては甚だ迷惑に感じた。と云って、ここで何時いつまで争っても究竟つまり水掛論みずかけろんである。市郎も終末しまいには黙ってしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はかないのが世の中と覚悟した上で、その儚い、つまらない中でせめてはたのしみを求めやうとして、究竟つまり我々が働いてゐるのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「いや、誰にも判りませんよ。の女は云う通りのヒステリー……究竟つまり狂人きちがいも同様なんですから……。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それにはべつ理由りいうなにも無い、究竟つまり学校が違つてしまつた所から、おたがひ今日こんにちあつて昨日さくじつ明日みやうにちも無い子供心こどもごゝろに、漠然ぼうつわすれてしまつたのです、すると、わたしが二きふつたとき
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)