穏和おとな)” の例文
ひよつとすると、穏和おとなしい栄蔵は、恐しさのあまり、気絶してしまつたのではないだらうか。それなら、ほつといちや大変だ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「醜なかないじゃないの。あたしあんたが好きよ。穏和おとなしいんだもん。義公みたいになまっちろい、それでいて威張っている奴なんか大嫌さ」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
まつうめせいくらべるとたけせいはずっとやせぎすで、なにやらすこ貧相ひんそうらしくえましたが、しかし性質せいしつはこれが一ばん穏和おとなしいようでございました。
交際つきあっていて、見慣れているから、惣平次一家の者は平気だが、誰でもはじめて会う人をちょっとぎょっとさせる、うす気味のわるい人間だった。が、気は、至極いい。穏和おとなしいのである。
栄蔵は背中を向けて赤ん坊をうけとつた。赤ん坊は軽くて温かである。それは栄蔵の背中を、信頼しきつたもののやうに、穏和おとなしくしてゐる。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
実地じっちってるとうまいたって穏和おとなしいもので、わたくしたいへん乗馬じょうばきになりました。乗馬袴じょうばはかま穿いて、すっかり服装ふくそうがかわり、白鉢巻しろはちまきをするのです。
ゲンも尾を振りながら、穏和おとなしくいて来て、自分で小屋に這入ってしまった。
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
あんまり穏和おとなしすぎるので、もうちつと悪戯いたづらをしてくれればよいと思つてゐる位の栄蔵が、そんな大それたことを仕出来しでかしたといふのは、わけが解らなかつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「黒ちゃんは穏和おとなしいから好きよ。ゆうべだって……」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)