稚子おさなご)” の例文
飛ぶ雲の影を見れば故郷の山を思い、うららかなる春の日に立つ野山の霞を見る時は、ありし昔の稚子おさなごの面影をしのぶ。
きふまた雪枝ゆきえは、宛然さながら稚子おさなごるやうに、両掌りやうてさうしかてゝ、がつくり俯向うつむく、背中せなかくもかげくらした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
稚子おさなごのやうに成りて正雄の膝を枕にしてる時あり、が給仕にてもはしをば取らずと我儘わがままをいへれど、正雄にしかられて同じ膳の上にかゆの湯をすする事もあり、なほつてくれるか。
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
多くの野の草が稚子おさなごを名付親にしていたことを知って、始めてタンポポという言葉の起りが察せられる。タンポポはもとつづみを意味する小児語であった。命名の動機はまさしくあの音の写生にあった。
と、ふたりの稚子おさなごを厄介者のように、飛騨守の手へ返してしまった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)