福助ふくすけ)” の例文
神棚には福助ふくすけが乗ツかゝツてゐて、箪笥の上には大きな招猫まねきねこと、色がめてしぼんだやうになつて見える造花つくりはな花籠はなかごとが乗りかツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
枕元を見ると箱の上に一寸ばかりの人形が沢山並んでゐる、その中にはお多福たふく大黒だいこく恵比寿えびす福助ふくすけ裸子はだかごも招き猫もあつて皆笑顔をつくつてゐる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
福助ふくすけが通ると私共のような者まで駈出して見る気になりますのは別で、また娘なぞに成ると実に綺麗でございますね
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こいつおかしいと思ったので、直ぐに後をつけやした。それ私は四尺足らず、三尺八寸という小柄でげしょう。もっとも頭は巾着きんちゃくで、ひらったく云やア福助ふくすけでさあ。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
五角、扇形おうぎがた軍配ぐんばい与勘平よかんぺい印絆纒しるしばんてんさかずき蝙蝠こうもりたことんび烏賊いかやっこ福助ふくすけ瓢箪ひょうたん、切抜き……。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
姫は太宰だざいの息女雛鳥ひなどりで、中村福助ふくすけである。雛鳥が恋びとのすがたを見つけて庭に降りたつと、これには新駒しんこま屋ァとよぶ声がしきりに浴びせかけられたが、かれの姫はめずらしくない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
頭のはち福助ふくすけの様に開いて、らっきょう型の顔には、蜘蛛くもが足をひろげた様な、深いしわと、キョロリとした大きな眼と、丸い鼻と、笑う時には耳までさけるのではないかと思われる大きな口と、そして
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
文治は年廿四歳で男のよろしいことは役者で申さば左團次さだんじ宗十郎そうじゅうろうを一緒にして、訥升とつしょうの品があって、可愛らしい処が家橘かきつ小團治こだんじで、我童がどう兄弟と福助ふくすけの愛敬を衣に振り掛けて
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頭でっかちの福助ふくすけみたいなやつです。黒い四角なふろしきづつみのようなものを、首にくくりつけています。そして、その小さなやつは、いきなり、むこうのほうへ、チョコチョコと走りだしました。
灰色の巨人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)