眼敏めざと)” の例文
禁ぜられていたしっては肝腎かんじんの手曳きの役が忽諸こつしょになるから飲む真似をして胡麻化ごまかしているのを利太郎が眼敏めざとく見つけ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「それは眼敏めざとくていらるるせいなんでしょうよ。元からそうでしたよ。それに年を取って来ると猶更そうなるものです。」
田原氏の犯罪 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あつしはね親分、外に取柄は無いが、酒を飮まないのと眼敏めざといのが自慢なんで——旦那がそれを見込んで年に十二兩といふ高い給金を出して下さつたんだ。
そしてそこには私たちの泊った丸源の亭主もいたが、眼敏めざとく私たちの姿を見つけると大急ぎで飛出して来た。
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
つまり眼の縁だけ燐光を放す昨夜あらわれた怪獣と、去月十日にあらわれた全身に燐光を放す獣と、都合二匹というのだろうね……君もなかなか眼敏めざとくなった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
賊の忍入るにはお誂向あつらえむきなんですが、その代りによくしたもので、殺された老主人が馬鹿に眼敏めざとい男なので、滅多なこともなかろうと、皆安心していた訳なんです。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
藤六は眼敏めざとく見付けて、眼に立たないように何かしら懐中ふところから出してやって立去らせるのであった。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ミツは、どうしたのよ、と、突然に何時もと違ふ勘三を眼敏めざとく見つけた。
神のない子 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
あっしはね親分、ほかに取柄とりえはないが、酒を飲まないのと眼敏めざといのが自慢なんで——旦那がそれを見込んで年に十二両という高い給金を出して下さったんだ。
カフエエに奉公していた時分に、花瓶の花を始終扱いつけていたので自然に覚えたのだそうですが、通りすがりの門の中なぞに、たまたま温室があったりすると、彼女は眼敏めざとくもぐ立ち止まって
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
眼敏めざとく殿下が眼を留めて、ささやかれる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
五十がらみの恐ろしい金棒曳かなぼうひき、そのうえ癇性かんしょう眼敏めざといのを自慢にしている女ですから、この女主人おんなあるじに知れないように、二階から脱け出すことは、猫のような身軽さで、物干から飛降りない限りは
木村が眼敏めざとく気がついて私に尋ねた瞬間があった。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)