真前まっさき)” の例文
旧字:眞前
人待石にやすんだ時、道中の慰みに、おのおの一芸をつかまつろうと申合す。と、鮹が真前まっさきにちょろちょろと松の木の天辺てっぺんって、脚をぶらりと
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いわれは何かこれにこそと、七兵衛はその時からあやしんで今も真前まっさきに目を着けたが、まさかにこれが死神で、菊枝を水に導いたものとは思わなかったであろう。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すでに前にも言ったように、この発議は英臣で、真前まっさきに手をって賛成したのは菅子で、余は異論なく喜んで同意したが、島山夫人は就中なかんずく得意であった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
官人の、真前まっさき飛退とびのいたのは、あえおびえたのであるまい……衣帯いたいれるのをつつしんだためであらう。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あッと云って、真前まっさきに縁へげた洋服は——河野英吉。続いて駈出そうとする照陽女学校の教頭、宮畑閑耕みやばたかんこうむなづくし、ぼたんひっちぎれてすべった手で、背後うしろから抱込んだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と呼ばわりながら、真前まっさきに石段を上れる伝吉と、二打三打ふたうちみうち、稲妻のごとく、チャリリと合す。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめて鸚鵡に見返して、此の言葉よ、此の言葉よ!日本、と真前まっさきに云ひましたとさ。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
真前まっさきの車が河野大夫人富子で、次のが島山夫人菅子、続いたのが福井県参事官の新夫人辰子、これが三番目の妹で、その次に高島田に結ったのが、この夏さる工学士とまた縁談のある四番の操子みさこ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真前まっさきに言ったはお三輪で。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)