相違ちがい)” の例文
二郎は握っていた青々とした小枝を地上ちびたに落して、耳を傾けていると又呼ぶ声が聞こえるのである。確かに姉の声に相違ちがいがない。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
聞いて御覧、芳さんが来てからは、また考えようがいっそきびしいに相違ちがいないから。何だって、またあの位、嫉妬しっと深い人もないもんだね。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうした御慣れなさらない山家住やまがずまいのことですから、さて暮して見れば、都で聞いた田舎生活いなかぐらし静和しずかさと来て寂寥さびしさ苦痛つらさとは何程どれほど相違ちがいでしょう。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一郎あれは私の妹の子に相違ちがい御座いません。眼鼻立ちが母親に生きうつしで、声までが私共の父親にそっくりで御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「きっとあの人に相違ちがいないよ」こう思いながら行って見ると、果して座敷に伊太郎がいた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
澄は物慣れたる調子『ハハハハつまらない。何がそれ程腹が立つか。馬鹿馬鹿しい』『はい、どうせ私は、馬鹿に相違ちがいはござりませぬ。奉公人にまで、蹈付けられるのでござりますもの』『はあて困つた。さうものが間違つては』
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
下手人がしらばくれて、(死)をたしかめに来たものらしい。わざと化されて、怪まぬように見せて反対あべこべに化かしてやった。油断をするに相違ちがい無い。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宗蔵と三吉との年齢とし相違ちがいは、三吉と正太との相違であった。この兄弟の生涯は、喧嘩けんかと、食物くいものの奪合と、山の中の荒い遊戯あそびとで始まったようなもので。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうしてそのお爺さんは、最前さっき美留女姫と白髪小僧とを追っかけた、眼の玉の青いお爺さんに相違ちがいなかった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
し賊が来てそれを盗んで行っても分らない筈だが、其様そんな手ぬかりをする礦場ではないと思った。して見ると何処にかきっと人が隠れて私のする様子を見守っているに相違ちがいない。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
アラ神であるということは、多少とも回教を知っている人には、看取されたに相違ちがいない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そんなに苦しかったんですかネ」と三吉も宗蔵の顔をながめた。「木曾に居ても随分暑い日は有りました——東京から見ると朝晩は大変な相違ちがいでしたが」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相違ちがいない、これじゃ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)