盲滅法めくらめっぽう)” の例文
そうなると、世間は盲滅法めくらめっぽうに君をもっともだとしてしまうだろう。——おれはどうかというと、おれはもう失われた人間なのである。——
道化者 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
お浜は、まるで気が狂ったように、箒をふりまわして、勘作の顔といわず、手といわず、盲滅法めくらめっぽうに打ってかかった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と、こッちで彼を呼びとめると同時に、盲滅法めくらめっぽうにすれちがッた高麗村こまむらの次郎も、はッと思い当ったことがあるらしく、彼等が追って来るのを待たないで
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何といっても、盲滅法めくらめっぽうに投げるのではない、十分の手練に、二分の怒気を含めて投げるのですから、敵いかに多勢なりとも、おもてを向けることができません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そう葉子は知らず知らず自分を見ていた。そこから盲滅法めくらめっぽうに動いて行った。ことに時代の不思議な目ざめを経験した葉子に取っては恐ろしい敵は男だった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
盲滅法めくらめっぽうと云う奴だ。それでは必ずことを仕損しそんじるよ。物事はまずはっきりと条理すじみちを立ててから……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
……妙な性分であっしは気が長い時にゃヤタラに長いんですが、何かの拍子にカーッとしちまうと、それから先が盲滅法めくらめっぽうに手ッ取り早いんで……篦棒べらぼうめえ日本人じゃねえか。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その棒を身体の前へ突き出し突き出しして、畑でもなんでも盲滅法めくらめっぽうに走るのだそうである。
闇の絵巻 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ルピック氏は、癇癪かんしゃくが起こってきた。ナイフは、盲滅法めくらめっぽうに、引き裂き、鋸引のこぎりびきだ。ルピック夫人は、「牛殺し、牛殺し」と喚いているが、はては、気が遠くなる、幸いなことに。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
しかるに、右の「こ」にあたる仮名においては、そういう区別があることを暗示するようなものが何もないのであって、ただ、盲滅法めくらめっぽうに一つ一つ実例について調べて行くより仕方がない。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
……今日まで盲滅法めくらめっぽうに生きてきたが、過去も怖ろしい、現在の悪業あくぎょうもおそろしい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その以外には何の準備も出来ない囚人服のまま、舞台裏から飛出して来たばかりの、金ピカ洋装の彼女と手に手を取って、てしない原始林の奥を目がけて、盲滅法めくらめっぽうに突進したのですからね。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は突然に眼を閉じ、唇を噛締かみしめて、雑木藪ぞうきやぶの中を盲滅法めくらめっぽう驀進ばくしんし初めた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし、敵の逃げるのも盲滅法めくらめっぽうだったし、彼の急追も余りに無茶だったので、松山の近い岩角いわかどに、その乗っていた馬がつまずいたとたん、馬もろとも、張苞は谷の底へころげ落ちてしまった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盲滅法めくらめっぽう、武蔵野のやみを方角もつけずに走り去りました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そいつをつかんで、盲滅法めくらめっぽう、闇の中へ投げつけて
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)