盛装せいそう)” の例文
旧字:盛裝
屋根に近いところに、モザイクで、赤バラの花一輪がはめられると、この建物は盛装せいそうをこらした花嫁さんのようになった。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
通りで盛装せいそうした座敷姿ざしきすがたにでっくわすことなどあると、「失礼よ、林さん」などとあざやかに笑って挨拶して通って行く。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
かれは、従えて来た扈従こじゅうの武者群を、左右にひらかせ、その中央に、武威ぶいをこらした盛装せいそうよろわれた自身を置き——きっと、此方こなたを見まもっていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれにしてもひめはそのゆうべ両親りょうしんうながされ、盛装せいそうしておそばにまかりで、御接待ごせったいあたられたのでした。
孔子が公に謁し、さて表に出て共に車に乗ろうとすると、そこには既に盛装せいそうらした南子夫人が乗込んでいた。孔子の席が無い。南子は意地の悪い微笑をふくんで霊公を見る。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かる瀟洒せうしや夜会服やかいふくたのや、裾模様すそもよう盛装せいそうをしたのや、そのなかにはまたタキシイドのわか紳士しんしに、制服せいふくをつけた学生がくせい、それに子供こともたちもすくなくなかつた。軍服姿ぐんぷくすがたもちらほらえた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
夢の中に、カーン、カーン、と天主教会てんしゅきょうかいの鐘がなるひびきを聞いた。大司教だいしきょうさまが、盛装せいそうをしてしずしずとあらわれた。と、下から清水がこんこんわき出して……。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)