皺面しわづら)” の例文
その内に思案して、あかして相談をして可いと思ったら、って見さっせえ、この皺面しわづらあ突出して成ることならッ首は要らねえよ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの皺面しわづらに小判をたたきつけて、もう来年からは、どんなにわしにお世辞を言っても、聞かぬ振りして米は八右衛門の隣りの与七の家から現金で買って、帰りには
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼はゆがんだ皺面しわづらを灰いろにして、死んだ者のようにうずくまっていた。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
思わず、そこへ、日向にのぼせた赤い顔の皺面しわづらで、鼻筋の通ったのを、まともに、のしかかって、ハタとける、と、さっと映るは真紅の肱附ひじつき
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこを通って、両方の塀の間を、鈍い稲妻形にうねって、狭い四角よつかどから坂の上へ、にょい、と皺面しわづらを出した……
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木戸から、寺男の皺面しわづらが、墓地下で口をあけて、もうわめき、冷めし草履のれたもので、これは磽确こうかくたるみちは踏まない。草土手を踏んで横ざまに、そばへ来た。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と呼んだのが、驚破すわや事ありげに聞えたので、手んぼうならぬ手を引込ひっこめ、不具かたわの方と同一おなじ処で、てのひらをあけながら、据腰すえごしで顔を見上げる、と皺面しわづらばかりが燭の影に真赤まっかになった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「誰だい。」といった藤兵衛とうべえは、匍匐はらんばいになって、胸の下に京伝の読本よみほんが一冊、悠々と真鍮環しんちゅうわの目金を取って、読み懸けた本の上に置きながら、頬杖ほおづえを突いたままで、皺面しわづらをぬっ!
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)