“番太（ばんた）” の例文
この辺の番太（ばんた）や町同心（まちどうしん）や、また町内の者にとっては、人見又四郎などという人物の存在は、まったく関知（かんち）しないことだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
寝しずまった帯屋小路の往来を、風に吹かれて白い紙屑が走って、番太（ばんた）の金棒が、向う横町をシャラン、シャランと——。
魔像：新版大岡政談 (新字新仮名) ／ 林不忘(著)
このほかにも、犬神人（つるめそ）だの、山番（やまばん）・野番（のばん）の番太（ばんた）だのと、種々の賤民もありましたが、大抵はもとは似たもので、それが後にいろいろに分派したものと解せられます。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ (新字新仮名) ／ 喜田貞吉(著)
平次は死骸を見張って居る町役人や、番太（ばんた）の老爺に挨拶して、早速筵をハネのけました。
銭形平次捕物控：237 毒酒薬酒 (新字新仮名) ／ 野村胡堂(著)
けれども屠者（としゃ）、鍛冶屋（かじや）、猟師、番太（ばんた）の子供はその位に就くことはもちろん出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) ／ 河口慧海(著)
辱（はず）かしめられた相手は、山の中の番太（ばんた）のむすめである。そんな話も出た。
夜明け前：03 第二部上 (新字新仮名) ／ 島崎藤村(著)
村方（むらかた）の方から驀然（まっしぐら）にこの古市の町へ走り込んだムクのあとを追いかけて来るのが何十人という人、得物（えもの）を持ち、石や瓦を抱えている。前には役人連、そのあとから番太（ばんた）、破落戸（ごろつき）、弥次馬の類（たぐい）が続く。
大菩薩峠：06 間の山の巻 (新字新仮名) ／ 中里介山(著)
「何でも番太（ばんた）だね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) ／ 佐々木邦(著)
自身番（じしんばん）へ馳けこんで、ちょうど外の涼み台で、祭りの御神酒（おみき）を酌（く）みかわしていた番太（ばんた）や、同心（どうしん）たちへ早口に訴（うった）えた。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
ワイワイいってるところへ、あの番太（ばんた）の野郎がヨ、まぬけた面（つら）アしやがって、エエ火事は渋江村（しぶえむら）ってふれてきやがった時にゃア、おらア彼奴（あいつ）の横っつらはりとばしたくなったぜ。
丹下左膳：02 こけ猿の巻 (新字新仮名) ／ 林不忘(著)
この点に於いてはかの番太（ばんた）などいう仲間と同じものであったのであります。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ (新字新仮名) ／ 喜田貞吉(著)
「カワタ」の「タ」は弟人（おとうと）をオトト、素人（しろうと）をシロトという如く、皮人（かわうと）をカワトと約（つづ）め、それがカワタと訛ったものか、或いは番太（ばんた）・売女（ばいた）・丸太（まるた）・ごろた（丸くごろごろする石）などの「タ」の如く
エタ源流考 (新字新仮名) ／ 喜田貞吉(著)