男松おまつ)” の例文
うめせいぎにわたくしをとめたのは、まつせいで、男松おまつおとこ姿すがた女松めまつおんな姿すがた、どちらも中年者ちゅうねんしゃでございました。
チャンとすましてもらしと無慈悲の借金取めが朝に晩にの掛合かけあい、返答も力男松おまつを離れし姫蔦ひめづたの、こうも世の風になぶらるゝものかとうつむきて、横眼に交張まぜばりの、袋戸ふくろど広重ひろしげが絵見ながら
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
表面は夜凪よなぎのとおり無事平穏に天神岸からともづなを解いた二百石船——淀の水勢に押されて川口までは櫓櫂ろかいなしだが、難波なにわ橋をくぐり堂島川どうじまがわを下って、いよいよ阿州屋敷の女松めまつ男松おまつ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すくすくと伸びて見えるのは寮の裏にあたる男松おまつ女松めまつ、そこから吹き込んでくる朝の涼風すずかぜは、まだ起きもやらぬ長廊下をそよそよと流れて、奥の数寄屋に見える水色の絽蚊帳ろがやを波うたせていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)