でん)” の例文
十八史略までは素読そどくを授かった覚えのある七兵衛は、「我をして洛陽負郭二頃らくようふかくにきょうでんあらしめば、いずくんぞよく六国の相印しょういんびんや」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それよ。女性にょしょうすら、そう思うか。新田ノ庄はわが家の祖がひらいたもの。北条殿の御代ぎょだい以来は、一でんの領土も貰ってはいない」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君の名の田中卓を、クラスの者たちは陰で、田中卓でんちゅうたくと呼んでいるのだが、君は知るまい。どうだ君はでんさんという名前なんだぜ。不愉快だろう?
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
十月二十九日の晩のことで、一行は京都を出発する時から、華中鉄道副総裁のでんさんの夫人始め三谷十糸子など、内地をそのまま支那に移したような身のまわりであった。
中支遊記 (新字新仮名) / 上村松園(著)
所詮は悲しいでん々太鼓をたゝくやうなことになりはしまいかと、既にして消極的なるおもひで、云ふならば、どうやら自己弁護的なる畏怖の心から、斯様に題したまでゞ
浪曼的月評 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
主人の馨之助に声を掛けられて、ハッと息を呑んだのは、でん庄平という青年紳士です。
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
学士院の安藤廣太郎君が氷上の出身であり、柏原の名家の出身でん艇吉君の弟、園田寛君もこの成城の近所に住んでいて、いつも花山椒の佃煮を貰うのであるが、それは昔から有名なものらしい。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
でん七郎じゃないか。」
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)